大丈夫か、日本の漁業

衰退する日本漁業

・我が国の漁業を取り巻く環境は、厳しいと言われています。日本人の魚離れが指摘されていますが(ただし、日本人一人当たりの水産物消費量は、先進国の中でアイスランドについて世界第2位とのデータもありますので一概には魚離れとも言えません)、世界的に見れば魚の消費量は増えているにも関わらず、国内漁場の水産資源は減り続けています。魚な取れないことにより、特に日本の漁業者は大きな打撃を受けています。私が事務所を構える八戸市においてもかつてにぎやかであった浜の衰退は誰の目から見ても明らかでしょう。

・かつて漁業は日本の花形産業でした。明治時代には主要な輸出品として外貨の稼ぎ手であり、終戦直後には国民の食糧難を救いました。繁栄していた日本漁業、今では後継者不足、国内漁礁の魚資源の激減、養殖はコストがかかるなど暗い話ばかりです。しかし、世界的に見れば漁業は成長産業です(藤川俊雄「日本の魚は大丈夫か」NHK出版新書 2011年)ノルウェー、アイスランド、ニュージーランド、豪州、チリなどは持続的に漁業収益を伸ばしています。

・では、どのようにすれば漁業を成長産業へと変えていくことができるのでしょうか。答えは簡単です。日本の沖合や太平洋の漁猟資源をうまく運用することです。ただし、言うは易し、行うは難しです。自然界の摂理で、長い目で見ると本来水産資源量は概ね一定であると考えられます。しかし、人間の漁業の技術は進歩します。勤勉な日本の漁業者が最新の技術を魚を制限なく取り続けると水産資源が枯渇するのは極めて理にかなったことでしょう。

・ここで、漁獲高の規制を含めた「太平洋銀行」における水産資源の「運用」をしっかりとおこなっていく時期に来ていると思います。適切な「運用」は国にしかできません。目先、今年の利益だけを考えた漁獲高の設定ではなく、魚が成長する3~5年先のことを考えて設定する。そしてそれを履行する。漁獲高を厳格に規制するということは漁業者の痛みを伴います。その間漁礁者を保護できるのも国しかないでしょう。

・食料安全保障の観点からも第1次産業と他種産業を同列に論じるべきではないと思います。米英などを見渡すとあらゆる情報や通信を扱う大企業があります。世界中の船舶の位置を常時把握できたり、沖の漁船から漁獲を連絡できたりと効率的に水彩資源を管理し販売することも可能です。

・勤勉で優秀な日本の漁業者や加工業者、もし国が音頭をとって改革すれば日本の漁業は再び花形産業へと成長できると確信しています。