憲法改正議論

 防衛省・自衛隊自体は、他の先進民主主義国の軍隊と比較しても、国民の統制にしっかりと従い政治を補佐する節度ある組織になっています。これは自衛隊幹部(士官、将校)を育成する目的で設立された防衛大学校の教育の賜物でもあると思います。防衛大学校は吉田茂首相(当時)の崇高な理念と強力なリーダーシップのもとで、戦前とは一線を画した民主主義時代の新たな士官学校としてスタートしています(私は決して旧軍を否定しているわけではありませんが)。昭和32年に行われた第1回の卒業式における吉田茂首相の訓示は今でも防大生に語り継がれ、その精神が守られています。
「君達は自衛隊在職中、決して国民から感謝されたり、歓迎されることなく自衛隊を終わるかもしれない。 きっと非難とか叱咤ばかりの一生かもしれない。御苦労だと思う。

 しかし、自衛隊が国民から歓迎されちやほやされる事態とは、外国から攻撃されて国家存亡の時とか、災害派遣の時とか、国民が困窮し国家が混乱に直面している時だけなのだ。言葉を換えれば、君達が日陰者である時のほうが、国民や日本は幸せなのだ。どうか、耐えてもらいたい。

 愚直に仕事を行ってきた結果、幸か不幸か、自衛隊は多くの国民の方々から信頼される組織になっています。内閣府が毎年行う世論調査によると自衛隊に良い印象を持たれている国民の方々の割合は92.2%にものぼります(平成27年1月、悪い印象は5.3%)。日本国内でこれほど良い印象を持たれている他の組織や職業集団はなかなかないでしょう。一方で信頼できない職業のランキングの中に「政治家」が毎度顔を出している気がします。あまりにもシュールなお話です。自衛隊はその昔「税金ドロボー」と言われていた時代から国民の方々の評価にかかわらず、日本を守るため奢ることなく淡々と日々やるべき仕事に取り組んできました。これは今後とも変わることはありません。安倍総理大臣は2017年7月の東京都議会選挙の街頭演説において反対の気勢をあげるグループに対し「あんな人たちに負けるわけはいかない」と叫んだとされますが、自衛隊は、思想信条にかかわらず等しく国民の方々を守ることを実行しています。災害などにおいても自衛隊に反対する活動家であろうが、普通の方であろうが困っていれば分け隔てなく助けるという当たり前のことを当たり前に行っています。戦後、先軍政治を標榜する国や一党独裁国家ソ連などから民主主義体制をしっかりと守り続けてきた自衛隊が、自ら望んで昔の軍国主義に戻るということはまず考えられません。もし万万が一、日本が平和主義や国際協調主義を放棄する場合があるとするならば、それは政治家によって起こされるものと思います。国際社会の現実を考えると平和主義や国際協調主義を貫くためにも戦力を保持し行使できる状態にしておくことは必要です。大切な大切な憲法にあえて辻褄があわない中身を載せておく必要があるのでしょうか。もうそろそろ自衛隊の存在を日本国憲法でしっかりと担保してもいいのではないでしょうか。実際に軍隊を相手にする武装集団である自衛隊が存在し、日本国はもちろん国際社会の平和と安全の維持に寄与している現実があります。自衛隊の存在を日本国憲法で担保することによって平和が侵されるといったロジックは、戦後70年以上自衛隊が存在しつつ平和国家として日本が歩んできた道を考えると、その歴史を否定することになると思います。そろそろいいかげん、改正するのかしないのかの議論くらい始めてもよいのではないでしょうか。