地方消滅の危機

・国立社会保障・人口問題研究所(以下「社人研」)の予測や各種レポートでも既に指摘されていますが、今後日本は確実に急激な人口減少に直面します。それも、労働年齢人口の減少に後に引き続き高齢者の他界を迎え、若年層高齢者層ともに減少していくという嫌な形での人口減少に直面します。日本人は国の生存繁栄を考える際に、あまり人口や年齢構成比に注意を払うことがないと思われますが、欧米などにおいては生存繁栄のための要因として認識され様々な施策がとられてきました。米国国防総省においても他国を研究・分析する際に人口や構成比は必須アイテムです。

 人口減少の影響を既に受けているのが地方、特に政令指定都市や中核都市を除く市町村でしょう。実際に政治活動で郡部を歩かせていただくと、この「地方消滅」の危機をひしひしと感じることができます。冷厳な事実として、郡部は若い世代が流出するのみならず、高齢者の減少も始まっており既に消滅に向かって歩み始めているとも言えます。

 では、どうすれば地方を維持していけるのか。地方から人口が減る原因として「自然減(死亡率が出生率を上回ることにより減少)」と「社会減(地方から大都市圏への流出などによる減少)」がありますが、地方の観点からは特に「社会減」に取り組む必要があると思います。社会減は若者などが都会に出て行って戻ってこない、などの現象により生じるとされます。若者が地方で幸せに生活できる環境作りが解決策の一つとなるでしょう。これまでの高度経済成長期から今まで行われてきた、地方自治体と地元国会議員が中央からお金を引っ張ってきて公共事業を行って地元を儲けさせるといった手法はもはや通用しない時代になっています。そもそも増大する社会保障費を考えると地方交付金の捻出すら難しくなる時代が来るでしょう。

【民間グローバル企業の地方分散】
 では、どうすれば地方を地元とする若者が地元に留まるのか。条件のよい職場の安定的な確保は一つの方法でしょう。地方では昨今労働力不足から有効求人倍率が上昇し、働く場所が無いといったことはなくなりましたが、若者の流出が止まったわけではありません。やはり地方には魅力ある職場が足りない、もしくは魅力ある職場は東京・大阪・名古屋などの大都市にあるといったところでしょう。
 ここは、国の施策として民間グローバル企業の地方移転を促進する施策をおこなっていくべきだと思います。元岩手県知事の増田寛也氏の編著書「地方消滅」(中公新書 2014年)にもあるように海外の法人税が安いからといって出ていかれるくらいなら全国一律の法人税を見直すべきだと思います。この見直しはなかなか難しいでしょうが日本の大部分をなす地方が生きるか死ぬかの瀬戸際です。検討の価値はあるでしょう。

【第1次産業の優遇】
 また、貴重な国税を使っても、職場としての第1次産業の魅力化も行うべきです(詳しくは「農林水産」のカテゴリーで後ほど)。

【地方の声をとどける?】
 地方選出の国会議員が「地方の声を届ける」だけでは、もはや通用しない時代に既に入っています。そんなことを戦後70年相も変わらずやってきた結果が今の地方の危機を招いているといってもよいでしょう。今までは地元の声を届けて、その声に応じてぽつぽつと中央からお金を引っ張ってきて公共事業を行ってきたとの印象がぬぐえません。そもそも公共事業は一時的な経済効果しか生みません。デフレ脱却などのためのカンフル剤としてなら効果が期待できますが持続的な経済成長を生み出すわけではありません。道路を整備した、体育館をつくっただけで社会減を食い止めることは難しいでしょう。もはや新興国や発展途上国が成長の過程で行うような手法が通用する時代はとうの昔に終わっています。
地方ごとの公共事業頼りから脱却し、税制改革などオールジャパンでやる中長期的な視野に立って国のグランドデザインを描けるのは国会議員だけです。