二大政党制

・政党システムの研究で有名なイタリアの政治学者ジョバンニ・サルトーリによると、政党システムは以下のように分類されます。
①一党制(社会主義国やファシズムの一党独裁)
②ヘゲモニー政党制(政党の数は一つではないが、野党は与党と競争し、挑戦するような力を持たない政党制。メキシコなど)
③一党優位政党制(複数政党間の競争関係はあるが、結果として一つの政党が傑出し、政権を長期的に独占するタイプ、日本など)
④二党制(英米などのように、二つの政党が議会のほとんどの議席を制し、交代で政権を掌握するタイプ)
⑤穏健な多党制(比較的、政策・イデオロギー距離の近い3~5の政党が競合し、多くの場合、連合政権をつくる。ドイツ、スイス、オランダなど)
⑥極端な多党制(お互いに政策・イデオロギー距離の遠い多党の政党が競合する、多極的・遠心的な性質の強い政党制。イタリアなど)
⑦原子化政党制(有力政党のない乱立型政党制)(加茂利男・大西仁・石田徹・伊藤恭彦「現代政治学」有斐閣アルマ 2012年 p141)

・現在の日本政治は、「自由民主党一強」といわれます。正当な選挙の結果として自由民主党が選ばれ、政権を長期的に独占している状態にあります。野党に責任があるとはいえ、今のサルトーリの分類でいうところの②ヘゲモニー政党制や果てには①一党制(社会主義国やファシズムの一党独裁)に近づくのではと心配です。どんどん先進的な民主主体制から遠のいていく。私は、先進的な民主主義国家を目指す以上、「保守」二大政党制が必要だと思います。

・安定した保守二大政党による国政は成熟した民主主義国家の証とも言えます。先進国の中で現在、二大政党制がきちんと機能している国は米英や英連邦の豪州といったところでしょう。いずれも長い民主主義の歴史を持つ国々又はその政治体制をそのまま持ってきた国です。政治学者宇野重規氏によると、保守主義はあくまで自由という価値を追求するものであり、保守主義は高度に自覚的な近代思想であり、早くから保守すべき「自由」の体制を確立した英米で保守主義が先行して確立したのは不思議でないとされています(「保守主義とは何か」中公新書 2016年 p156 下線筆者)。英米以外の伝統的な王権などによる専制独裁などの政治体制が長く存在し、むしろその打倒が政治的課題となった国々では、伝統を否認する政治的急進主義(今でいうと共産、社会主義革命を主張するようなインパクトでしょう)とそれに反発する勢力とが衝突し、自由な秩序の確立に向けて斬新的改革を主張する保守主義が確立する余地は小さかったといえます。

・我が国も保守すべき「自由」の体制が確立された時期が比較的新しく、且つ、昭和の軍国体制を経てきているため、保守主義がいまだ成熟していない環境にあるともいえます。保守二大政党制を確立した時をもって、英米と肩を並べる政治大国になれると言えるのではないでしょうか。